<CG   文1   文2>

詩文

出舟

月は流れる
雲路はゆれる
今宵酔いて
舟をいださん


河童

振り向けば 河童どの
いずこで おととの釣りなさる
あっちだよ
あっちじゃわからん どこでしょか
そっちだよ
そっちじゃわからん どこでしょか
こっちだよ
こっちじゃわからん どこでしょか
わからん時は またにしな


へちまのへた - ヘ短調 -

へちまの 芽が でたよ
かわいい 芽だよ
あなたに 見せてあげたい
いますぐ おいでね

へちまの 花が さいたよ
きれいな 花だよ
あなたに 見せてあげたい
いますぐ おいでね
へちまの 実が なったよ
おおきな 実だよ
あなたに 見せてあげたい
いますぐ おいでね

へちまの へたが とれたよ
みごとな へただよ
あなたに 見せてあげたい
いますぐ おいでね


盂蘭盆会

いのちきらめく夕ぐれに
思いそれぞれ流れ寄る
ここまで来たもの
ここから行くもの
夏の集まり
夏のお祭り
盆のお泊まり


こんにちは

こんにちは
お元気でいらっしゃいますか?
天気はいつも元気です
暑い日もとても暑い日も
寒い日もとても寒い日も
雨の日もすごい雨の日も
風の日もすごい風の日も

こんにちは
お元気でいらっしゃいますか?
天気に負けずに
元気でいきましょう
私は明日も元気でしょう
私は明日も呑気でしょう
私は明日も天気でしょう

こんにちは
おはようございます
今朝はとっても良い天気ですね
にわか雨などありそうですね
はい
それではさようなら
また今度
お会いしましょうね

こんにちは
今日もとっても良い天気ですね
雨ふりばかりの毎日ですよ
はい
それではさようなら
またいつか
お会いしましょうね

こんばんは
今日はほんとに良い宵ですね
すっかり暗くなりましたよ
はい
それではさようなら
今夜もぐっすり
おやすみなさい


あのこの世

私が死んだら
私が死んだら私にもう明日は来ないのですね
明日って概念を私はいつごろ知ったのかしら
初めはたしかに何も知らなかったはずですし
明日って概念を私は誰かに教わったのですね
初めはたしかに何も知らなかったはずですし
私が死んだら
私が死んだら私にもう生も死もないのですね
生死って概念を私はいつごろ知ったのかしら
初めはたしかに何も知らなかったはずですし
生死って概念を私は誰かに教わったのですね
初めはたしかに何も知らなかったはずですし
私が死んだら
私の知った全ては消え失せてしまうのですね
初めからまるで何んにも無かったみたいにね
きれいさっぱりと消え失せてしまうのですね
私が存在しているこれをこの世というならば
死んで行くべきあの世はどこにあるのかしら
私が死んだら
死んで行くべきあの世はどこにあるのかしら
あの世はこの世と思ったことがありますのよ
死んだら忽ちこの世があの世になるのではと
この世はあの世と思ったことがありますのよ
死んだら忽ちあの世がこの世になるのではと
この世はあの世と思うようになりましたのよ
死んだら忽ちこの世があの世になるのではと
生きるってあの世を作ることになるのですと
だから毎日この世を自分好みに作るのですの


書きかけの恋文

しばらくどこかに行きたいなぁ
テレアビブもアテネも遠いから
伊豆か熱海のどこかしら
誰かといっしょに行きたいなぁ
海をながめて泣きたいよぉ
おや?誰かがさ、雨の夜更けに
露天のお風呂に首までつかって
桶をかぶって、ふるえているよ
泣いてる場合じゃぁないみたい

しばらくどこかに行きたいなぁ
パリもロンドンも遠いから
草津か石和のどこかしら
誰かといっしょに行きたいなぁ
山をながめて泣きたいよぉ
おや?誰かがさ、いのしし相手に
相撲の稽古をしているみたい、
あれは、坂田の金時に違いない
泣いてる場合じゃぁないみたい

しばらくどこかに行きたいなぁ
ボストンもサンフランシスコも遠いから
新宿か荻窪のどこかしら
誰かといっしょに行きたいなぁ
街をながめて泣きたいよぉ
おや?誰かがさ、お酒を飲み過ぎて、
イカはいかが、なんてメールしている
楽しいか?って、問いただそうか
泣いてる場合じゃぁないみたい

しばらくどこかに行きたいなぁ 
君と一緒に。


書きかけの新しい恋文 2

太陽が沈んでからどこぞのお店に入ってさ
何かを一緒に食べたいわけではないけどね
夜更けてどこぞのあやしい飲屋に入ってさ
何かを一緒に飲みたいわけではないけどね
どこぞの公園の朽ちたベンチに腰掛けてさ
とりわけ何か話をするわけではないけどね
今度会いたい・・よ
いつか会いたい・・よ
君に会いたい・・よってばさ


マツボックリ

ブラブラ散歩をしていたら
マツボックリがころがって
にっこり笑っていらしたの
思わずポッケにしのばせて
お家に持って帰っちゃった
こっそり机の上に並べたの
私の大事な宝物 ‥ きゃ~!


見ないでいると

あなたの姿を一日見ないでいると
三か月も見ないような気がするわ
あなたの姿を一日見ないでいると
三年間も見ないような気がするわ
あなたの姿を一日見ないでいると
三才も歳とったような気がするわ

(詩経 「彼采葛」・志津訳)


芽と葉と花と実

やがて
たどり着いた星の地面の上に
雨が上がり
日がさし
土がほっくりすると
明るくあったかな春の呼び声に誘われて
両手を頭に背伸びをしながら芽が出るとて
ぼんやり目を覚まし
芽はだんだん大きくなって葉に変身するとて
白い歯を見せて大きなあくび
葉はどんどん茂り小枝に花を咲かせるとて
丸くて大きな鼻の穴をひろげ
花が蝶になり飛んでいくころ実がみのるとて
どんぐりの実の二つの 耳飾り

(龍ヶ岡 NTの 公園のオブジェのために)


学問のすずめ

見晴らしのよいところで
そっくりかえって見上げれば大きな木がある
快晴の秋の空に風に乗って飛行する
実のなるけやきは鳥たちの公園だ
春早くまだめもさめてないころに
満開に咲くさくらは人たちの公園だ
大きな木ではいろいろな鳥たちが
かわるがわる集まってよくしゃべる
朝は雀
学問のすすめをするすずめとかが
昼は鳩
教育にはハートが問題と母と子のはととかが
夕は烏
どんぐりは食べられるのだから好きと
主張するからすとかが
夜は梟
黒い袋にもぐりこむのが好きなふくろうとかが
大きな木ではいろいろな鳥たちが
かわるがわる集まってよくしゃべる
今日も一日よくがんばったばったの
仕事のこととか
ここは井戸の中か茶碗の中かを考える
かえるのおろかさとか
少年よ夢もつかめと激励するかめの賢さとか
おおかたそんなとりとめのない
茶飲み話なのだろう
暇と言えば暇だが平和と言えば平和な
昨日となんら変わらぬ日常の生活を
森におくる彼らには
松の根を枕にする彼らには
鳥や虫たちには仕事はないのだろうか
教養はありそうなのだが
歌はうまいのだが

(龍ヶ岡 NTの公園のオブジェのために)


昨日まで共に語り合った友達が
ふるさとへ帰って行った
遠い国に
困難な急流を登りきって
龍になってしまった鯉のように
登竜門か
いつの日か龍が遠い国から降りてくるなら
ここに待とう
降龍門か
いつの日か君がこの国に帰ってくるのを
ここで待とうか
交流門に

(龍ヶ岡 NTの公園のオブジェのために)


もちづき

大きな山がありました
山の上には広い空
空にはぽっかり丸い月
月のなかには白兎
兎が餅をついている

ぺったんこ ぺったんこ
ぺったんぺったん ぺったんこ

餅はたちまち星になり
夜空いっぱい広がって
よもやま話をはじめます
今日はとっても良い天気
お日さまでたからまた明日

きらきらり きらきらり
きらきらきらきら きらきらり

星のひとつがおちてきて
桜の園でねんねして
おかしな不思議な夢見てる
食べてもへらない餅の夢
月でつかれた餅の夢

もちつき つきもち
つきもちもちつき もちづき


夜明け

星が消える
空が白む
山が笑う
風が踊る
夜が明けるまで
夜が明けるまで
君とひとときを


幾万年の夢からさめ
今ひとときの夢に入る
かそけき
いすみし
ゆえなきいのち

今ひとときの夢からさめ
幾万年の夢に入る
かそけき
いすみし
ゆえなきこころ


家埋山の

家埋山のお寺の山門に寝泊る親爺は
滅多に外に出ないようだ
日の出頃に
規則正しい歩運びで背筋をのばし
両手をよく振って山門を一周すると
直ぐに内に入る
日没頃には
棕櫚箒と杉皮の塵取りで庭掃除をし
風で散った木の葉を集め雨戸を閉めて
素々と火を焚く
家埋山のお寺の山門に寝泊る親爺は
滅多に外に出ないようだが
庭の菜葉や牛蒡や豆などは生き生きと育っている
家埋山のお寺の山門に寝泊る親爺は
山門の周りだけでくらしているといえる


玉手箱

春やあけぼのにうかびいる
青いもりにすむとりのふく
草のふえについさそわれて
水にうまれたとひとのいう
空にこだまするうたにのり
踊りまわるなみゆらめきて
影にひそみたちみたはずの
海のさおとめのなみだする
遠いおもいではおいやりて
夢ははねのあるこらにやり
枝にもものみのみのるまで
野にあるぼたんながめいて
美いさけをにるこよいより
昔のむかしまでそぞろゆき
土にまみれればつきやほし
広きみちゆけばかぜのまま
花はさきちりてたびするに
遊べまなべとてつたえなむ
時によみがえれまだこぬへ
此によみがえれまだみぬに
渡れよいやさとこおらさと
舟をいだすとてきてみれば
鶴がたけかめとうめをまつ
是はおめでたやたまてばこ


不在

近くまで来たから、
連絡しないで寄ってみたら、不在だった。
アトリエの戸は開いているから、
散歩でもしているのだろうと、
先日来た時に撮りそこねた写真を撮りながら、
待つことにした。
石膏で真っ白になったあなたの仕事場を歩き回っていたら、
多くの道具や材料や作品の型などを見ていたら、
ここで私の作品は生まれたんだと、
意外にも、昔のことを思い出してしまった。
1980年の「少年と鷹」から 2010年の「IMONOIMONO」 まで、
30年。
一緒に数えきれない仕事をして、
その度に一緒に据付をしたんだよなぁ‥
私がどんなに無理を言っても、
あなたは黙ってやってのけたんだよなぁ‥
私が何をしたいのか、
あなたはよ~くわかっていたからなんだよなぁ‥
私が何者なのか、
あなたはよ~くわかっていたからなんだよなぁ‥
私の仕事はあなたしかできないのを、
あなたはよ~くわかっていたんだよなぁ‥
私が仕事をしなくなった理由も、
あなたはよ~くわかっていたんだよなぁ‥
だから、
あなたにはすごく感謝しているんだがなぁ‥
なんてね。
すっかり感傷的になってしまって、
不覚にも、涙がこぼれてきたから、
外に出て、
雲に隠れた甲斐駒をながめながら、
あなたの帰りを待つことにした。
どこに行ったのだろうか。
そろそろ私は帰る時間になってしまったけれど、
あなたの帰りは遅くなるようだから、
帰ります。
さようなら。


南の島の

南の島の浜辺を歩いています
白い砂の浜辺を歩いています
たくさんの貝殻が打ち寄せられています
赤や白の珊瑚のかけらも混ざっています
手のひらいっぱい拾い集めて
それらを広げて眺めていると
海の中のにぎやかな景色が見えてきます
色とりどりの魚の歌声が聞こえてきます
膝のあたりの深さのところで
足を投げ出し首まで浸かると
海水面はきらきら虹色に光輝いています
海水温はお風呂のようなあたたかさです
思い切って素潜りしています
竜宮城は意外に地味なのです
南の海に浮かんでぷかぷか流れています
ヤシの木の影の風はとてもいい気持です
南の島の砂浜に寝ころがって
白い砂にまみれて楽しいです
たくさんの流木が打ち寄せられています
夜の空には金や銀やの星が瞬いています
南の島の浜辺を歩いています
白い砂の浜辺を歩いています

あなたは私は水の生物と言う
なかなか名前は出てきません
たこさん いかさん いわしさん
さばさん たいさん まぐろさん
かめさん かにさん いるかさん
ふぐさん さめさん ひとでさん
えびさん えいさん くらげさん
うにさん こぶさん さざえさん

南の島の浜辺を歩いています
白い砂の浜辺を歩いています
私は寝床について目を閉じて
筆名を推敲したのに不覚にも
寝入ってしまったみたいです
私は大きな温泉に入っている夢を見ています
私は湯豆腐になってしまった夢を見ています
そこにあなたは一瞬でさえも現れないのです


一人でどっかに

一人でどっかに行こうかなぁ~
熱海の海にでも行こうかなぁ~
そうはいかないんだろうなぁ~
君と一緒がいいんだろうよぉ~


風の子

風の子はいつのまにか横に座っていた
はなをたらして身軽に炉端を歩きまわり
笛を片手に自由に窓を出入りした
今年から入学といっていたから 6才か
窓を閉めると 風の子は窓の前でじっとしている
近づくと
「どうして閉めちゃったの?」と聞くから
「風が入るからだよ」と答えた
だから、玄関の戸を開けて
「おおい こっちから出てね」と言うと
出ていった
外で待っていた龍の背に乗り
笛を吹きながら
鳥とともに
飛び立っていった

(龍ヶ岡 NTの 公園のオブジェのために)


思い出

月にあわせて旅をして
満ちて元の古巣に帰る
旅の思い出を一頁ずつに綴れば
燦々とふる光
戻ってくる潮
燃える空
走る風
不動の石
五色の羽衣・・・
そしてこの子供たち
お日さま浴びてくらすものたち
自然のなかでくらすものたち
みんな
思い出のなかにくらすものたち
ぐずぐずしてると
今はすぐにもう思い出になってしまう
思い出は作るものだよ
いい思い出が作れれば
思い出は宝だ
たくさんのいい思い出を作ろう
たくさんの宝をあなたに
君と歩いたこの道は良い道だったと思えるように
でも
あんまり多いと
重いで

(龍ヶ岡 NTの公園のオブジェのために)


龍は

そして
月が背を向けると
待ちかねた星たちは
西から東へと走りまわり
漆黒の天空は
つかのまのにぎやかな
星たちの運動会だ
夏の日の雨上がり
高みから見渡せば
龍が
丘の上にあざやかに輝き
おだやかに横たわっているが
はてさて何を夢見ているのだろうか
龍は

(龍ヶ岡NTの公園のオブジェのために)


君を好きになるのは

人から無断で盗んぢゃいけない
人をたくみに騙しちゃならない
犯した罪には罪名がありまして
名の無い罪などはありえません
それではお聞きいたしまするが
人を好きになるのは罪なのかと
盗まなければ良いのでしょうか
騙さなければ良いのでしょうか
決して盗むつもりはないのです
決して騙すつもりもないのです
それではお聞きいたしまするが
人を好きになるのは罪なのかと
私があなたを好きだというのは
何という名の罪なのでしょうか
名の無い罪などはありえません
未遂罪であったりするのかなあ


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